東京大学史料編纂所

HOME > 編纂・研究・公開 > 所報 > 『東京大学史料編纂所報』第9号(1974年)

東大寺文書調査

 昭和四十八年十二月五日より六日まで東大寺に出張し調査にあたる。
 一、目的
 (1)昭和四十九年度出版『東大寺文書之十』原本校正用文書及び関連文書の借用。
 (2)未採訪文書の借用(但し、菊池が過去に於て採訪せるものを含む。本所では未借用なるもの)。
 (3)未採訪文書の搜索とその採訪。
 二、今回、右(2)は主として起請文(三三六点、但し、断簡を含む)、自建久七年至天正十一年。そのほか、寺法部文書など(書状など約一〇〇通)。
 (1) 右、起請文の一例。
  建久七年七月二十一日 黒田庄住人大江良永起請文
   興福寺東金堂寄人となりしことにつき、東大寺の衆勘を蒙り、寺領追却に処されしことにかかる。
 (2) 起請文類の相当数は修理を要す。これらは、本所東大寺文書影写本第四回採訪欠本分(68・69・70)に当る。
 (3) 右、起請文に含まるる料紙は、二月堂以下二十種の牛王宝印、三種の宝印、計二十三種あり。右内わけは、
   〔牛王宝印〕二月堂 大仏殿 戒壇院 法華堂 中門堂 薬師堂 観音院 妙音院 滝本 八幡宮 西福寺手〓 両福寺 福成院 善鐘寺 阿弥陀寺(以上寺内及末寺分)大吉祥天 大日講 薬師講 観音講 地蔵講(以上講牛王宝印)
   〔宝印〕長谷寺 金峰山 熊野山
 三、全くの未採訪分約一六〇点(康平二年より明治二十年代に至る無年号の文書断簡)は一応点検の上、さしあたり重要な三五点を筆写す。尚年月日確定し得るもの数通、残部推定し得る中世文書断簡などは借用、復原補修の上返却の予定。
 以上、借用文書は東大寺図書館各架にわたり、計六三三点(平安—室町末)。借用文書の図書館台帳及び菊池作成の目録と原本との照合は千々和到これにあたり、未採訪文書の検索・筆写は菊池武雄これにあたる。
 調査にあたり、同寺図書館員各氏の協力を得、殊に新藤佐保里氏の強力な援助を得る。紙上にて感謝の意を表す。(菊池武雄・千々和到)


『東京大学史料編纂所報』第9号p.152